子宮がん検診 医師のアドバイス
子宮頸がん 清川医院 齋藤つとむ
子宮がんには『子宮頚(頸)がん(しきゅうけいがん)』と『子宮体がん(しきゅうたいがん、別名子宮内膜がん)』があり、それぞれまったくちがう病気です。子宮の入り口付近、「子宮頚部(しきゅうけいぶ)」にできるがんが、子宮頚がんです。子宮頚がんは、20-30歳代の女性が発症するがんの中で最も多く、女性特有のがんの中では乳がんに次いで第2位で、日本全国で1日に約10人の人が子宮頚がんで亡くなっています。一方、子宮体がんは子宮の奥、「子宮体部(しきゅうたいぶ)」にできるがんで、閉経前後の50-60歳代に多く、若い女性に多い子宮頚がんとは対照的です。
子宮頚がんは遺伝などに関係なく、性交経験がある女性なら誰でも発症する可能性のある病気で、近年20-30歳代の若い女性の発症が増加しています。(初性交の低年齢化と若い女性の喫煙の増加のためといわれています)
症状は、初期のうちは無症状で、進行すると「不正出血」、「性交後の出血」、「おりものの異常」などがありますが、症状に気がついたときには、進行してしまっていることも少なくありません。
治療は、「手術」、「放射線療法」、「抗がん剤」などがありますが、早期であれば子宮の入り口付近の一部を切除するだけで治すことができ、手術後に妊娠することも可能です。また定期検診で、がんになる前の「前がん病変」のうちに発見でき、予防注射もあります。
定期検診は、婦人科のクリニックで受けることができます。検診の内容は、まず内診台にあがり、腟鏡で子宮頚部の状態を観察し、やわらかいヘラやブラシのようなもので子宮頚部の粘膜を軽くなでるように子宮頚部の細胞を採取します(細胞診、PAPテスト)。次に内診(腟に指を入れて、下腹部を手で押して診察)で、子宮の大きさや形などを確認、5分程度で終了します。まれに少し出血することがありますが(通常2-3日で止血し心配もありません)、痛みはほとんどありません。2週間ほどで検査結果がわかります。
症状がなくても、1-2年に1度の、定期検診が重要です。その他に細胞診と一緒に、後述するヒトパピローマウイルス(HPV)の検査(HPV検査)を行うこともあります。
子宮頚がんの発症にはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染と喫煙が関係しています。HPVの感染により「前がん病変」が発症し、喫煙などの影響でがんに進行します。喫煙により前がん病変からがんへの進行が早くなります。HPVは一生のうちに、約80%の女性が性交渉により感染します。そのため、性交経験のあるすべての女性が子宮頚がんになる可能性を持っています。
子宮頚がんは予防注射(ワクチン)で予防することが可能です。子宮頚がんワクチンは、HPVのなかでも子宮頚がんの原因となりやすい「発がん性HPV」に対するワクチンです。一般の医療機関で予防注射が受けられます。
3回の注射で、発がん性HPVの感染を防ぐことが可能で、子宮頚がんが予防できます。
しかし、ワクチンは、すでに感染しているHPVや、子宮頚部の前がん病変やがん細胞を治す効果はなく、あくまでHPV感染を防ぐためのものです。
このように子宮頚がんにおいて、ワクチン接種によるHPV感染予防、定期検診による前がん病変からの早期診断、喫煙しないこと、がとても重要です。