予防接種 医師のアドバイス

予防接種 医師のアドバイス

安房医師会理事 鈴木内科クリニック 鈴木正義

 

皆さんは”VPD”という言葉をご存じでしょうか?

VPDとはVaccine preventable diseases、つまりは”ワクチンで防げる病気”の事です。このVPDの中には、ロタウイルス感染症やヒブ感染症、肺炎球菌感染症、ジフテリア、破傷風、百日咳、麻疹、風疹、ポリオ、おたふくかぜ、水痘、日本脳炎、インフルエンザ、ヒトパピローマウイルス感染症、A型B型肝炎、黄熱病等が含まれています。

これらの病気は予防接種でよく出てくるものも多いのでご存知の方も多いかと思います。

しかしこれらの病気が命にかかわる事もある、あるいは重篤な後遺症を残すことがあるという事はあまり知られていないのではないでしょうか。

今の日本は医療がかなり進歩していますが、それでもこのVPDの多くは、一度発症すると根本的な治療がなかったり、治療そのものが困難であったりする特徴を持っています。

たとえば、ロタウイルス感染症は、毎年120万人の方が発症し、78,000人程度が入院しています。そして40人前後の子供たちが脳症を発症し、死亡したり後遺症を残したりしています。

また、水痘では年間100万人が発症し、4,000人が入院、年間20人程度が死亡しています。このような数字を見てびっくりされる方も多いかと思いますが、これが現実です。

たとえばロタウイルス感染症や麻疹、風疹などは現在も根本的な治療はなく、対症療法が中心になります。ヒブ感染症や肺炎球菌感染症は抗生物質を投与しますが、最近は、抗生物質が効かない、いわゆる耐性菌が出現し、治療に難渋する事も多くなってきています。

ですからやはり予防が最も大切ということになります。防ぐ方法があるのに何もしないのはやはりどうかと思います。

 

予防接種はこのように、病気にかからないようにする、もしかかっても症状を軽くする、重症化しにくくするという”個人”に対する重要な役割がありますが、予防接種の役割はそれだけではありません。

周囲の人にうつさないようにという”集団”に対する大切な役割ももっています。

お腹に赤ちゃんがいる妊婦さんに風疹をうつさないように、ご主人はじめ周囲の方々に風疹ワクチンを接種してもらうなどはこの一例です。

平成20年大学生などの若者の間で麻疹が大流行し、その年は11,013件の報告がありました。このため国が、麻疹に関する特定感染症予防指針を策定し、積極的に麻疹の予防接種の接種率を上げた結果、平成23年には、麻疹の報告件数は442件に激減しました。このように予防注射は”自分のために”という面のみならず、”みんなのために”という側面もあることも認識していただきたいと考えます。

日本は、予防接種に関しては他の先進国に比べて遅れていると言われて久しいですが、それでも少しずつ改善されつつあります。

平成25年度からはヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、子宮頚がんワクチンが定期予防接種に組み込まれ、特に1歳までに受けておきたい予防接種の数が多くなり、投与スケジュール管理が難しくなっています。
そこで、初めてのワクチンデビューは生後2か月、2か月目の誕生日からをお勧めします。

このため、保護者の方々は、妊娠中から産科の先生や小児科の先生などに相談したり、また、自分で本を読んだり、日本小児科学会のホームページを参照したりして準備をされておくといいかと思います。

もちろん館山市の健康課にご相談してください。きっと親切に対応してくれます。
大切な子供さんたちの命や健康を守るために、予防接種を積極的に受けましょう。


関連情報

  1. 予防接種


コメントを残す